小説「Axis of Fate」

案/絵/編集:たみぽん。文:水竜寺葵。オリジナルファンタジー小説。更新は約月1ぐらいです。

第1話⑦「始まりの道③」 Axis of Fate~大樹物語~

下町から大通りに出て石畳の道をまっすぐ行くと王宮の門を潜りそして広場に着く。


広場はかなり広いはずだが、多くの人で溢れかえっていた。
そこには冒険者や屈強な男達の他Fateに関係がありそうな…復讐を目的にしている者もいるようだった。
そんな中、空いている壁際のスペースを見つけ壁にもたれかかる。

 

「あ!こんなところにいた!」

「ルア!?」

 

暫くすると人込みを掻き分け、ルアがアルファの所へとやってきた。

 

「何でこんな所に来てんだ?」

「私も一緒に行くことにしたから♪」

 

驚き彼女が何故ここに居るのか尋ねる彼へとルアが笑顔でそう話す。

 

「はぁ!?」

「あんた一人じゃ、何しでかすかわかったもんじゃないわ」

 

素っ頓狂な声をあげて驚くアルファの様子などお構いなしに彼女は話を続ける。

 

「そんな子供じゃあるまいし…」

「それに…」

 

呆れる彼の言葉など気にした様子もなく呟くと、腰にあるポシェットから直径三センチ程の月と太陽が彫られたペンダントを取り出した。
月の部分には赤い宝石が埋め込まれている。ルアはそれをじっと眺めた。
彼女は十二年前、両親と弟が行方不明になっている。
その手掛かりがこの飾りであった。

 

「何か手掛かりが見つかるかもしれないし…ね」

「… …」

 

皆が行方不明になる直前。ルアとその弟に両親から手渡されたペンダント。
ルアは弟に手渡された対となる飾り、太陽に宝石がはめ込まれたペンダントをずっと探していた。

 

そんな話をしていると前の方から歓声があがる。
広場の中心に簡易的に建てられた祭壇に大臣らしき人が立っていた。


静かにするよう彼が促すと後ろからベネチアンマスクのように鼻から上を隠し、軽くウェーブのかかった長い金髪の人が出てきた。
その人物の登場に再び大きく歓声があがる。

 

「もしかしてあの人が…?」

「国王エクザクス・イリンシュレイだ」

 

ルアの言葉に応えるようにアルファは呟く。

 

「あんた国王様に仕えていたのよね?」

「あぁ…といっても1年ほどだがな」

 

彼女の問いかけに彼は淡泊に答える。

 

「どんな人なの?」

「そうか…祭事以外は人前には出ない人だからな。寛大な方だ、師匠も尊敬していて…」

「あの仮面の下ってどうなの?…イケメンかしら?」

 

ルアに尋ねられて答えていた彼だったが話を全く聞いていない彼女が瞳を輝かせて言う。

 

「あのなぁ…」

 

その様子に呆れながら呟くとルアはこういうやつだったと思いやれやれといった感じで溜息を吐いた。

 

【勇士有る者よ、よくぞ集まってくれた!】

 

すると国王による演説が始まった。

 

【今回、イリンシュレイ国内では小規模ながら空間異常現象が多数確認された。このことを受け我が国もこれを重要な事と捉え、概要と決定事項を発表する。Fateの際、我々は最悪の結果を回避すべく空間異常現象の原因を研究、調査を最優先に開始した。調査結果によるとこのオルビスという世界にはもう一つの世界があり、その世界を〝アーディッシュ〟という。このオルビスとアーディッシュとの間には別空間が存在し、それを「空間の狭間」と称した。そこに存在する「管理する者」が互いの世界を保っていることを確認し、我々は十二年前これを封印し奴等を退けることに成功したのだ。今回も同様に空間の狭間の管理する者の影響と思われる。今後も今回のような事態が起きぬように管理する者の排除を目的とする志願者を募ることにしたのだ。以上がイリンシュレイ並びに各国で決定された事項である】

 

演説が終わると周りの人々がざわつき始める。

 

「もう一つの世界アーディッシュだってよ…」

「十三年前に現れた〝裏〟はそのアーディッシュの者だっていうのか?」

「管理する者があいつ等を…」

 

ひそひそと話し合う声を聞きながらアルファは考え込むように俯く。

 

(もう一つの世界?空間の狭間?管理する者?そんなものが…騎士団に所属してた時に資料を調べたが、そんな記載はなかったが…)

 

「…ファ。アルファってば!」

「!あぁ、どうした」

 

難しい顔で考え込んでいたアルファはルアが呼んでいたことに気付き慌てて声をあげる。

 

「これからどうすんの?国王様が言ってた空間の狭間に行くんでしょ?」

「そうだな…すぐにでも行きたいところだが場所の見当が付かないんじゃ…!」

 

空間の狭間の場所が見当がつかないアルファだったが何かを思い出し、はっとする。

 

「?」

「以前調べた資料にだな、〝裏〟…つまり奴等が遺跡を利用していたという記載があったような気がしてな…」

 

不思議そうな顔で彼の顔を見詰めるルアへとアルファは思い出したことを伝えた。

 

「…じゃ、行きましょ」

「何処にだよ」

 

にこやかに行くと言い出した彼女の言葉に彼は尋ねる。

 

「どこって、決まってんじゃない。遺跡よ、遺跡♪」

「この大陸だけでも幾つあると思ってんだよ…」

 

楽しそうなルアとは対照的に遺跡の数を考えた途端げんなりとするアルファ。

 

「だ・か・ら、片っ端から調べるんじゃない!」

「はぁ…お前らしいちゃぁお前らしいな…」

 

楽しそうな彼女の様子に彼は溜息を吐き諦めたように呟く。
空間の狭間に旅立とうとするが、何処にそれがあるのか見当はつかなかった。
アルファが以前調べた情報でどこかの遺跡に手掛かりがあるようだが、この大陸にはいくつもある遺跡からそこを推測するのは難しい。


二人はとりあえず王都から一番近い西南にある遺跡へと向かうことにした。