小説「Axis of Fate」

案/絵/編集:たみぽん。文:水竜寺葵。オリジナルファンタジー小説。更新は約月1ぐらいです。

第4話⑨「良からぬ噂」Axis of Fate~大樹物語~

そしてしばらくの間、見つけては逃げられ…見つけては逃げられ…を繰り返しいっこうに摑まる気配がない。しまいにはエリザベスを見失ってしまいそれぞれ手分けして町の中を探し歩いた。

 

「エリザベスちゃん見つかった?」

 

町中を走り回ったサウスがアルファとスゥに合流し息を弾ませながら尋ねる。

 

「あれ…」

 

息を切らしたアルファが指さした先には家の屋根で大あくびをしているエリザベスがいた。

 

「全然摑まらないネ…」

 

彼が言うと合流したスゥも走りつかれて荒い息になった声で言う。

 

「ボクが行ってみるよ。エリザベスちゃんにお家に帰ってもらえるように話してみる」

「はっ?猫と話すって…」

 

サウスの言葉に彼が驚きと呆れた様子で呟く。

 

「ボク、動物の言葉が分かるんだ。しばらくは森の中で暮らしていたけどお兄ちゃん意外に人間の友達はいなかったから、森の動物たちが友達だったんだ。だからエリザベスちゃんとだってお話しできるよ。だからボクが話して帰って来てもらえるように頼んでみる」

 

彼女がそう言うと驚かさないようにとそっとエリザベスがいる屋根の下まで歩いていく。

 

「エリザベスちゃん。ご主人様が心配してるよ。だからお家に帰ってあげて」

「え?ご主人様が心配してるの…う~ん。ちょっと外で遊んでいただけなのに。でもご主人様が心配してるのか。でもでも、もう少しここでのんびりしたいしな~」

 

建物の下へ行き猫に声をかけるとエリザベスが驚いて目を大きく見開くも今度は目を細めて考え深げな顔をした。

 

「そんなこと言わないでお家に戻ろうよ。町長さんが心配してるから」

「おや、君は言葉が分かるの?」

 

サウスの言動にエリザベスの方も驚きと興味深げな眼差しで彼女を見て話しかけてくる。

 

「人間は言葉が分からないものかと思っていたけどそうじゃない人もいるんだね」

「うん。エリザベスちゃんが何をしゃべっているのか分かるよ。ボクは昔から動物とお話しができてたから」

「エリザベスって名前あんまり好きじゃないんだ。だって男の子なんだもん。でもご主人様が必死に考えて付けてくれた名前だから文句は言えないんだよね」

「へ?オスなの……」

 

サウスの言葉に不機嫌そうな顔をするとそう言って困ったといった感じで話す。その言葉にエリザベスがオスであることに驚く。

エリザベスと言う名前とピンクの可愛らしいリボンを付けていることから、メスだと思い込んでいたのだ。

 

「君達ずっと追いかけて摑まえようとしてたでしょ。だから必死に逃げてたんだ。だって人間につかまったら何されるか分からないって友達が教えてくれたから。それに家の中は窮屈で…もう大人だから外で自由に遊んだりのんびりと日向ぼっこしたりしていたいんだよ…」

「だけど君のご主人様は君のことをずっと心配してるんだよ。だから君を探してつかまえるように頼まれたんだ」

「そっか。それでずっと追いかけてきたんだ。う~ん。…わかったお家に帰るよ」

 

しばらく話をしているとエリザベスは屋根から降り、自分からサウスの下へと近づき彼女の腕の中にすっぽりと収まった。

 

「「?」」

 

その光景を遠くから眺めていた二人はあれほど逃げ回っていたエリザベスが自分から彼女の腕の中へと飛び込んだことに不思議に思い首を傾げる。

しかしこれでようやくクエストを終える事ができると何故かほっとした気持ちになるのだった。