小説「Axis of Fate」

案/絵/編集:たみぽん。文:水竜寺葵。オリジナルファンタジー小説。更新は約月1ぐらいです。

第4話⑩「良からぬ噂」Axis of Fate~大樹物語~

アルファ達が猫探しをしているその頃、ルアは旅支度のために市場を歩いていた。


「あら、貴女。また会ったわね」


必要な物を買いそろえていると再びヨーンに出会う。


「あ、ヨーンさん。ここにいたんですね」


笑顔で声をかけられ彼女もそちらへと近寄っていった。


「良かったら見て行ってね」

「はい」


彼女の言葉に品物を見る。ヨーンの店に並べられている商品は主に金属製のペンダントやブローチ等、この辺りでは見かけない綺麗で繊細な細工ばかりだった。


「綺麗…」

「ありがとう…そうそう、旅人さんからこんな話を聞いたのだけれど… …」


綺麗なアクセサリーを見ていると彼女から気になる話を聞く。


「!?」


その言葉にルアは目を大きく見開いた。


「… …そう、ですか。教えてくれて有難うございます」

「えぇ。貴女達の旅に、女神ノエル様のご加護があらんことを…」


ヨーンにお礼を言って別れようとすると彼女がそう言って優しく微笑んだ。


※※※


そして猫を町長へと引き渡し、アルファ達はギルドへ依頼の完了報告をしにきていた。


「おい、あの話聞いたか?」

「ああ。…あれだろ。全く気が狂ってるって思うよな」

「どうなることやら…」


ギルドの待合室で冒険者達がある噂話を語り合っている。


「何の話だ?」


それが気になったアルファが声をかけた。


「知らないのか?… …」


冒険者の一人があの噂を聞いていないのかと言いたげに口を開く。


「!?」


その言葉に息を呑んだ。

その後宿へ戻ってきたアルファ達とルアが合流すると今日聞いた噂話について語り合う。


「あのね、さっき市場に行った時、ヨーンさんからある話を聞いたんだけど…」

「俺も話を聞いた…俺が聞いた話とルアが聞いたって言う話は同じだと思っている…」

「えぇ…」


幼馴染通しお互い色々な言葉を言わなくてもわかり合っている様子で小さく頷き合う。


「ジンラグナの領主が裏(アーディッシュ)を捕らえているって話だ。そのジンラグナはお前の…」

「うん。私の叔父さんが治めてる街よ」


アルファの言葉に頷くとルアも語る。


「十二年前まではお父さんが治めてたんだけど…家族皆が行方不明になってからは弟の叔父さんが治めたの。だけどね…その事が切っ掛けで私は孤児院に送られたのよね…」


彼女はジンラグナの前領主の娘だったのだが、十二年前に両親が行方不明になって以来叔父がその地を治めているのだった。


「そうだったの?」

「なんと!どうして叔父さんはルアを引き取らなかったネ?」


驚いた顔でサウスが言うとスゥが尋ねる。


「それは…跡取りとしては幼過ぎるっていうのもあったと思うけど、それ以前に私の事が邪魔だったんだと思う」

「でも身内を孤児院に送るなんて酷い叔父さんヨ!」


瞳を伏せて語ったルアの言葉に彼女は憤る。


「とにかく、私の故郷で起こっているし、その話が本当なのかどうか、真相を確かめたいのよね」

「そうだな。領主が本当に裏を捕らえているのかどうか確かめないと、お前の気もすまないだろ?」


彼女の言葉にアルファが同意すると力強い口調で言う。

ルアの故郷で起こっているその噂の真相を確かめるためにアルファ達はジンラグナへ向かうことにしたのだった。


to be continued...