小説「Axis of Fate」

案/絵/編集:たみぽん。文:水竜寺葵。オリジナルファンタジー小説。更新は約月1ぐらいです。

第4話②「良からぬ噂」Axis of Fate~大樹物語~

森を抜け、街道をしばらく歩いていると前方に何か見えてきた。黒い塊が何やらうごめいている。

近付くとはっきりと見えた視界の先には十頭の狼に囲まれ襲われている馬車の姿があり、その持ち主と思われる人が抵抗している姿も見えた。

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「大変!馬車が襲われてるわ!」

「助けるヨ!」

 

それを見たルアが言うと戦闘態勢をとったスゥが駆け出す。

 

「サウス、お前はその辺で隠れてろ!」

「う、うん」

 

アルファが武器を構えながら言うとサウスは頷き近くの木の陰へと隠れる。

 

「はぁっ!」

「ワタシも行くあるヨ。はっ!」

「食らいなさい!」

 

馬車の周りを囲う狼達の意識を自分達の方へとむけさせるべく彼等は地面へと一撃を与えた。

 

「!」

 

グルルルル…ワヲーン

 

群れのボスと思われる一周り大きい狼が吠えると標的をアルファ達へと変える。

 

「うまくいったわね」

「よし、一気に片付けるぞ」

「任せるあるヨ」

 

ルアが言った言葉に彼がそう言うとスゥが前へと出て次々と狼達をなぎ倒していく。

瞬く間に狼達を追い払うと馬車の方へと顔を向けた。サウスもアルファ達の側へと戻る。

 

「怪我はありませんか?」

「大丈夫よ。助けてくれて有難う」

 

ルアが尋ねると長い緑髪の女性が微笑み答えた。

大きめのターバンを頭に巻き、黄緑色のローブを着ている。

 

「… …」

 

そして女性の背後に隠れるよう、赤髪の女の子が小さく頭を下げてお礼する。彼女も女性と同じようなターバンを巻き、ピンク色のローブを着ている。

 

「!」

 

しかしアルファ達が視線を送ると慌てて身を隠すように顔を引っ込めてしまった。

 

「私はヨーン。旅の行商人よ。この子は私の妹のルーン。内気でおとなしい子で、ちょっと人見知りが激しくて…それよりも、助けてもらったお礼は何がいいかしらね」

 

グゥ~

 

ヨーンと名乗った女性が言うとともに誰かのお腹の虫が小さくなる。

 

「ボクの……」

 

頬を赤らめ恥ずかしそうに手をあげて呟くサウス。

 

「あら食事がまだなのね。少ないけれど分けましょうか?」

 

ヨーンが小さく笑うとそう提案した。

 

「あぁ助かる」

 

アルファは有り難いと言った感じで頷く。

 

「ア~美味しいネ。空腹のお腹にしみるアル」

「スゥ食べ過ぎだよ!…ごめんなさい」

 

一心不乱にバスケットに入っているパンを次々と平らげていくスゥの様子にサウスが言うと女性へと謝る。

 

「ふふっいいのよ。よっぽどお腹がすいていたのね」

 

それにヨーンが微笑み大丈夫だと言った感じで答えた。

 

「本当に助かりました。有難う御座います」

「あら、お礼なんていいのよ。助けてもらったお礼なのだから。それよりも貴方達はこれからどこへ行くのかしら?」

 

ルアが感謝してお礼を言うと女性が小さく首を振って答えてから尋ねる。

 

「これからタスカーに行くつもりだ。そこで食料を調達したり、色々とやりたい事があるからな」

 

「あら、それなら私達もちょうどタスカーへ向かうところなの。良かったら乗せていきましょうか?」

 

アルファがそれに答えるとヨーンがそう提案してきた。

 

「それは助かるな」

「いいのよ。その代わり町へ向かうまでの間、護衛を頼んでいいかしら?さっきみたいに獣の群れや野盗なんかに襲われたら困るもの」

 

彼女の提案にありがたいといった感じでお礼を述べる彼へとヨーンがそう言って小さく笑う。

 

「もちろんよ。私達に任せてください」

 

ルアが乗せてくれるお礼ですからといった感じで胸を張って答える。

こうしてアルファ達はヨーンの馬車に乗り町へ向かう間、護衛をするということとなった。