小説「Axis of Fate」

案/絵/編集:たみぽん。文:水竜寺葵。オリジナルファンタジー小説。更新は約月1ぐらいです。

第4話③「良からぬ噂」Axis of Fate~大樹物語~

…そして、それぞれ自己紹介も終わり馬車に揺られること数時間。

 

「……」

「な、何?」

 

ずっとサウスの顔を見詰めるルーンに彼女は正体がばれることを恐れながら尋ねる。

 

「… …」

「っ…!」

 

少女が顔をよく見たいと思ったのかフードを外そうと手を伸ばす。

サウスは必死でフードを目深までかぶり両手で抑え取れないようにする。

 

「?… …」

「あ、ご、ごめん…でも、これだけは外せないんだ」

 

途端に泣き出しそうな顔になったルーンの様子に彼女は慌てて謝った。

 

「ねぇ、その子…?」

 

ヨーンもずっと気になっていたようで尋ねてくる。

 

「あぁ…こいつな極度の恥ずかしがり屋なんだ。だからこうしてフードでいつも顔を隠してるんだ」

 

それにアルファがはぐらかすように説明する。

 

「そうなのね」

 

彼女がそう呟くとそれ以上追究してこない事に胸を撫でおろす。

 

(やっぱり耳やしっぽを隠すためとはいえ、子供だけこの格好は目立つな。何か考えないと…)

 

アルファは内心で呟くと町へ着くまでの間何かいいアイデアはないかと考えを巡らせた。

 

ぐうううう

 

その時鳴り響く巨大なお腹の音が。全員がスゥへと視線を向ける。

 

「お腹すいたあるヨ」

「さっきご飯を分けて頂いたのにもうお腹すいたの?」

「スゥの食欲は異常だな…」

 

先ほど朝ご飯を食べたばかりだというのにお腹がすいたと騒ぐ彼女の様子にルアとアルファが呆れる。

 

「…これ…」

ルーンが馬車の奥の積み荷から小さなバスケットから何かを一つ取り出すとそっとスゥに差し出す。

 

「おお。くれるあるカ?」

 

彼女はそれを手に取ると貰ったものを不思議そうに見詰めた。

 

「…これは何カ?」

「…お菓子…です…」

 

見たこともない桃色で丸い物体にスゥが尋ねると小さな声でルーンが言った。

 

「それはね。西国の菓子でマカロンっていっていうのよ。色を付けた焼き菓子にクリームを挟んだものなの」

 

ヨーンがそのお菓子の説明する。

 

「このまるくて甘い香り……美味そうネ」

 

その言葉を聞き流しながらスゥが匂いを嗅いで微笑む。

 

「とっても、甘くて…お、おいしいです…色もいろいろあって…楽しいですよ」

 

ルーンが笑顔で言うとバスケットいっぱいに入っている水色や黄緑色、紫といった色とりどりのマカロンを見せてきた。

 

「食べると元気…回復するし…力が出ますよ」

「そうあるカ。それじゃあ早速いただくヨ!」

 

少女の言葉に彼女は理解すると大きな口を開けてマカロンを頬張る。

 

「ん~!美味しいアル」

「そんな色の食べ物見た事ないけど……それ美味しいの?」

 

美味しいと言って笑顔になるスゥの様子にサウスが尋ねた。

 

「食べますか?」

「え。いやボクはいいよ。お腹すいてないし」

「一つ食べるだけで…元気になりますよ?皆さんも良かったらどうぞ……」

 

ルーンの言葉に彼女は慌てて断るも、ウルウルした眼差しで人数分差し出してくる彼女の好意を断るのも良心が痛み、アルファ達も一つずつ貰って食べてみる事にする。

 

「「「い、いただきます」」」

 

三人はひきつった顔で得体の知れない物体を口の中へと放り込む。すると見た目に反して口内いっぱいに広がる甘くとろける味に見る見るうちに顔がほころぶ。

 

「あ…美味しい」

「ああ。思っていた味と違うな」

「ほんと、甘くておいしいわ」

 

サウスが言うとアルファとルアも同意して頷く。

 

「これ、お気に入りなんです…美味しいから…」

「ルーンちゃんは甘いのが好きなんだね。私も甘いもの大好きなの」

「ボクもどちらかというと甘いものの方が好きかな」

「ワタシも甘いもの好きアル。みんなで甘いもの同盟組むあるヨ!」

 

「なんか盛り上がってるな……」

 

盛り上がり甘いもの同盟を組むと騒いでいる女の子達を遠巻きに眺めながらアルファは呟く。

すっかりヨーンとルーンと意気投合した彼等は楽しく会話を交わしながら旅を続ける。