第3話⑧「異国の少女」Axis of Fate~大樹物語~
それから少ししてからアルファを見張り番に残し女性陣は眠りにつく。
そして辺りも静まり返った真夜中のこと…
「…ねえ、アルファ」
蒔きの番をしている彼へとサウスがそっと声をかけてきた。
「なんだ寝てないのか」
「これ、お兄ちゃんの手帳なんだけど…」
とサウスが差し出してきたのは手帳だった。表紙は革で覆われ、ノート部分の端からおびただしい量の付箋が付いている。かなり年季の入った手帳だ。
「ボクじゃ難しくて、内容がなんて書かれているのか分からないんだ」
「どれ……」
受け取った手帳を開いてみる。一ページ一ページとめくっていくと、そこには彼が今まで調べたとされるメモや調べた内容がぎっしりと書かれていた。が、この手帳が他の手に渡ってもいいようにするためか文字の羅列はバラバラでどれも意味をなしていない。暗号化されているのかアルファにも分からなかった。
【Fate・アーディッシュ・黒い霧・魔物の凶暴化の関係性】
手帳をめくりながら何とか読めた一部の単語を心で呟く。
(…Fateの事を調べていたのか?)
そして最後の方のページを開くと兄からのメッセージが書かれていた。
【この手帳を見ている者へ。この子を見て驚いた事だろう。だが、この子はあの事件を起こしたモノたちとは別の者だ。干渉を人為的に起こし、あのモノ等をこの世界に放った者は別にいる。私はそう思っている…もし願うならばこの子を護って欲しい。私もすぐに追いかけるつもりだ…それまででいい】
(サウスがこの手帳を持って行くことは、考えのうちに入っていたって事か)
書かれている文面を読み終えたアルファはそう内心で呟く。
(しかしこの人にサウスは大事に育てられてたんだな…)
サウスを護って欲しいと願う兄という存在が、彼女を大切に育ててきた愛情を知ってアルファはサウスの顔を見る。見つめられた彼女は不思議そうな顔をしていた。
「暗号化されていてさっぱりだな」
誤魔化すかのように手帳を閉じると、そう言って彼女に返す。
「そう…なんだ…」
アルファなら分かると思っていたサウスはがっかりした様子で肩を落とした。
「アルファありがとう。お休みなさい」
「ああ…お休み」
彼女がそう言うと横になり眠りに就きに行くその背へ向けて小さく返事をすると
(それにしても…Fateは人為的に起こされ、奴らを放ったことになる。あの内容が本当だとしたら一体誰が…何の目的が…?)
先ほど手帳に書かれていたことを考えてみたものの答えが出ず、とりあえずこれ以上考えるのをやめた。
サウスから見せられた兄の手帳に書かれていた内容の謎だけを残し、アルファ達の旅はまだまだ続くのだった…
to be continued…