第3話③「異国の少女」Axis of Fate~大樹物語~
「終わったな…」
魔物から意識をそらすとアルファは言う。
「ちょっと時間かかっちゃったわね。サウス、もう出てきても大丈夫よ」
その言葉にルアも話すと背後にいるサウスへと声をかけた。
「……」
木の陰からひょこっと出てきた彼女は深刻な顔で何事か考えこんでいる様子。
(ボクは戦えないし魔法だって使えない…それって二人の足手まといにしかなってないんじゃないのかな?)
歩き始めた二人の後に続きながらサウスは内心で声を出し自分が何もできないことに悩む。
「…ねえ、どうしたら魔法って使えるの?ボクもアルファやルアと一緒に戦いたいよ」
「え…えっとね。魔法っていっても、まず適性があるかどうかよね?」
前を歩く二人へと唐突に声をかけてきたサウスの様子に驚いたものの、ルアはちゃんと答えるとアルファへと視線を向けた。
「適正はあるんじゃないか?」
「?」
彼の言葉に理解できなくてサウスが不思議そうに目をぱちくりさせる。
「それってどういうこと?」
ルアも意味が分からなかったようで尋ねた。
「あの大蜘蛛の時、一瞬だが動きが止まったんだよな」
「それって無意識に使ってたってこと?」
アルファの言葉にルアがなんとなく理解した様子で尋ねる。
「だろうな、後は…魔力コントロールとイメージ力だな」
「コントロールとイメージ力?」
彼の説明にサウスが不思議そうに首を傾げた。
「やり方は簡単さ。まずは集中力をつけること。次に技を放つイメージをする。例えば炎が集まるイメージをしながら…我が前に集えって唱える。言霊に力を乗せるんだ。そうすれば…ほら、手の平に炎が集まってこうなる」
アルファは説明しながら魔法を使って手の平に野球ボールくらい炎の塊を出現させる。
「この塊が手の平に集まらず飛び出してしまったり、集まっても玉にならず暴れるようだとコントロールができていない証拠だ」
「どうすればコントロールできるようになるの?」
彼の言葉にサウスがさらに質問した。
「力加減を覚える事かな。火や水、光でもいいから集中力を高めて手の平に納まるまでコントロールの練習をするんだ。そうしていけば自然にコントロールできるようになる」
「さすがアルファ!教え方が上手ね」
説明を聞いて納得するサウスの様子にルアがそう言って笑う。
「これから俺とルアが魔法のやり方を教えていってやるから大丈夫だ。そうだな…まずは基礎知識からだな。次の町で魔術書の本を買ってやるからそれを見て覚えろ」
「うん。アルファありがとう」
にこりと笑い言われた言葉にサウスは嬉しそうにお礼を述べる。
「私、サウスには治癒術が使えるような気がするのよね。それが使えるようになってくれたら私も少しは楽になるし。治癒術の事ならいろいろと教えてあげられるわよ」
ルアもにこりと笑い言う。
「ルアもありがとう。ボク、がんばって覚えるね!」
サウスは彼女にも感謝の気持ちを伝えると意気込む。
「それじゃあ歩きながらある程度の事を説明してやるな」
「うん♪」
いつの間にか止まっていた足を動かし歩き出しながらアルファが言うとその後を追いかけながらサウスも頷く。
「ふふっ。何だか私達先生みたい」
ルアがおかしそうに笑いながら二人の後に続いて歩き出した。