小説「Axis of Fate」

案/絵/編集:たみぽん。文:水竜寺葵。オリジナルファンタジー小説。更新は約月1ぐらいです。

第1話③「旅立ち」 Axis of Fate~大樹物語~

そして翌日。
まだ薄暗いうちから起きた少女はそっと兄の部屋へとやって来る。
そしてテーブルの上に置いてある手帳を手に取ると眠っている兄の顔を見やった。


「…行ってくるね、お兄ちゃん…」


目の前に眠っている兄へと精一杯の笑顔でそう囁くと彼を起こさないようそっと部屋から出ていく。


「… …」


少女がいなくなった後、彼は目を覚ましてゆっくりと起き上ると彼女が出ていった扉を見つめた。

 

この男は12年前のFateが終わりに近づいた時の事、無人と化した村で一人の少女を見つける。

当時6歳ごろだったその少女はちょうどこの村に調査に来ていた彼に見つけられた。

彼は少女の姿を見て初めは驚いたが、少女は自分の名も知らず、何をしていたのかも分からずで、不憫に思った彼はこの子が人間ではないと知りながら、彼女と共に人里離れた辺境の地で暮らした。

だが成長するにつれ、男は少女の異変に気付く。10歳を過ぎた頃から成長が止まっていたのだ。

今日まで成長していれば18歳ぐらいだろうだが、彼は「これがこの子の種族の特徴だろう」と気にしなく、育てていたが、少女のほうは自分が兄とは違う存在だということに気付き悩んでいた。

 

(自分が一体何なのか知りたい…ですか…)


昨夜の出来事を思い起こし彼は呟く。

 

「ボクは…自分が一体何なのか知りたいんだ!」


「あなたという人は…」


昼間駄目だと言ったにも関わらず彼女は晩御飯の席で再び旅に出たいと言い出した。
普段は明るくふるまう彼女がそう男に言ってきた。

昨日、使者の知らせを聞くや否や、何かに呼ばれている感覚があると語った少女。そんな妹に対し兄は猛反対した。

だが彼女は諦めなかった。

それは最近になって不思議な夢を度々見るようになったからだと…そしてそれはここ数日、毎晩のように夢に出てくるからだと少女は再び語る。


「そんなのはただの…」


語り続ける妹に兄はそんなのはただの夢だと言い聞かせようと口を開く。

だがそれは少女の言葉により遮られた。


「わかってる!だけど…呼ばれている気がするんだよ…」

 

(サウス…あなたの決意が固いようだったから、もしやとは思っていましたが…)


ベッドの上で昨夜の事を思い起こしていた男は小さく笑うとベッドから立ち上がると、彼はごそごそと何やら準備を始めた。


「あの会話を聞いていたのなら、まず向かうのは王都・イリンシュレイか…」

 

こうして少女…【サウス】は「兄」と呼んだ男の下から旅立つ。
〝彼女に呼ばれている。彼女なら何かを知っているはず〟だと思い、自分の存在を確かめるため旅立つのだった。

 

to be continued...