第2話⑩「ラウルス遺跡」Axis of Fate~大樹物語~
ーーー数時間休憩し、アルファが動けるようになるまで回復した。
あくまでこのラウルス遺跡には探索目的で来ているのでさらに奥へと向かう。
建物を出ると、街全体が天井が土で出来たドームに覆われていて、目の前には当時の建物が風化せずにそのままの状態で残っていた。
それはまるで天変地異の後、時が止まってしまったかのように…。
「こんなにも綺麗に残る物なのかしら?」
「雨風に晒されてなかったから、そうなんだろう。それより足元見ながら気をつけて進めよ」
ドームを見上げながらルアが言うと、アルファがちゃんと足元を確認しない彼女に注意する。
「… …」
二人の数メートル後ろをサウスが静かに付いてきていた。いまだにマントを羽織り、フードを目深に被っていた。
「あ、なんか広場みたいな場所に出たわよ」
しばらく歩いていると広場に辿り着く。
中央には広い石舞台があり、何か儀式でも行っていたのか?その石舞台の床には魔法陣の様な模様が描かれていた。
「待て、誰かいるぞ」
その舞台の中心には黒づくめの一人の青年がいて、それに気づいたアルファがルアを止めるように声をかける。
長いと思われる髪をまとめ、黒い三角帽子の中に入れているようだ。
肩には白黒の尾の長い子犬のような小動物を乗せている。
「何してるのかしら?」
「さぁな」
床に描かれたかすれた魔法陣に何かしていたように見えたが、ルアとアルファがいる位置からでは何をしたのか分からなかった。
「これでよしっと…」
青年は手に持っていた小袋をズボンのポケットに入れ、振り向くと三人がいる事に気が付く。
「!!あぁ、お兄さん達ここまでご苦労様。だけど、ここには手掛かりなんて何も無いよ」
笑顔を絶やさない表情をした好青年が明るい口調でそう言う。
「何で分かる?」
「何でって?だってお兄さん達〝志願者〟なんじゃないの?じゃなきゃここに来るはずないしね」
アルファの言葉に青年は笑顔のまま答える。
(志願者?と言うってことはこいつもあの演説の場にいたのか?)
彼の言葉にアルファはあの広場にこの男もいて演説を聞いていたのかと思った。
「お前もそうじゃないのか?」
「まさかぁ… …ん~」
怪訝そうに言われた言葉に青年が言いかけて何事か考えるように唸る。
「あ!僕はただ遺跡に興味があるだけなんだよ」
青年が今、思いついたかのように言う。
明らかに嘘をついている事に気付いているアルファが鋭い眼差しで彼を見やり口を開いた。
「そんな風には見えないけどな」
「はは…そういうことにしといてよ。じゃ~ね」
はぐらかすように乾いた笑いをすると手を振り石舞台から降りていく。
「?」
「… …」
三人の横をすり抜ける際に青年がサウスを見て首を傾げるが、そのまま立ち去っていった。
彼女は自分の正体がばれたのではないのかとドキドキしたが、何も言わずに立ち去ってくれたので安堵の息を零し身体から力を抜く。
「ねえ。さっきの人、何かやってたみたいだったけど?」
「一応調べてみるか」
アルファを小突いて言ってくるルアに返事をすると、青年が何かをしたと思われる魔法陣や石舞台を調べることにした。