第2話⑤「ラウルス遺跡」Axis of Fate~大樹物語~
一方その頃ルアは中庭から大分離れた場所に来ていた。
少女を背負いこの建物で迷っていたのだ。
「う~ん。ここ何処だろう?早く外に出なくちゃいけないのに…この扉開けられないかしら」
出口と思われるエントランスの扉は外側が土砂で塞がれているのか、
「駄目だわ。どこか別の出口を探さないと…」
彼女の細腕ではびくともしなくて諦める。
別の出口がないかと廊下をうろうろと彷徨っていると、
「ん…?!うわぁあっ」
少女が目覚め、女性に背負われていることに気付くと驚き後ろに転げ落ちてしまう。その拍子でマントについているフードが取れてしまい顔が露わになる。
クリっとした黄色から青へとグラデーションがかかった瞳にはいまだに驚き、困惑した色が浮かんでいる。
「!!」
獣耳が付いている自分の姿を見られてしまった少女は慌てて両手で己の耳を隠しその場にうずくまる。
「大丈夫よ。何も怖いことはないからね」
怯えて小さく震える少女にルアは優しく頭を撫ぜて大丈夫と語りかけた。
「お姉ちゃん…」
その行為に戸惑いながら少女が呟く。
「あいつが来る前に逃がしてあげるからね」
その様子を優しい眼差しで見ながら頭を撫ぜる手はそのままににこりと笑いルアが言った。
「あいつ?」
誰のことを言っているのだろうと疑問に思った時、男の声が聞こえてくる。
「俺の事か?ルア」
「アルファ…」
いつの間にかアルファがルアの後ろに立っていた。
しかしその顔は殺気立っている。
「そいつを渡せ!」
「嫌よ!絶対に渡さないわ」
殺気立つその様子にルアも気づいていた。
彼女もまたアルファが家族を〝裏〟に殺され、それを憎んでいることを知っていたからだ。
だからこそ少女をアルファから守ろうと強い口調で言い返す。
「!!…」
ルアの後ろにいる少女の顔を見たアルファは一瞬驚き戸惑った表情を見せたが、すぐに殺気立った顔に戻ると握っていた剣の切っ先を女の子へと向けた。
「アルファ!」
彼の過去を知っているからこそ、ルアは少女を庇う様にアルファの前へと立ちはだかる。
「そいつが何なのか分かってるだろ!」
「分かってる。けど…絶対に駄目!」
この少女が人ではない者とは分かっているけど、彼に渡してしまってはきっとこの子は殺される。
まだ幼さの残る少女を殺させるわけにはいかなかった。
(こんなに怯えている女の子をアルファになんか渡せない。渡したらこの子はきっと…)
そう思った途端、ルアは本能的に行動していてアルファから隔てる様に少女を守ろうとしていたのだ。
「ここから逃げて…大丈夫よ。あいつは私が止めるから」
剣を突き付けられ恐怖で震えている少女へと逃げるように促す。
少女はその言葉にはじかれたように立ち上がるとこの場から逃げ出していった。