小説「Axis of Fate」

案/絵/編集:たみぽん。文:水竜寺葵。オリジナルファンタジー小説。更新は約月1ぐらいです。

第2話⑥「ラウルス遺跡」Axis of Fate~大樹物語~

「待て!」

 

「行かせない!」

 

逃げ出した少女を追いかけようと駆け出すアルファの前に再び立ちふさがり通せんぼをすると鋭い眼差しで彼を睨んだ。

 

「ルア…どういうつもりだ?あいつは裏なんだぞ」

 

「私は裏なんて見た事ないし、あんたがあいつ等に家族や村の人達を殺されて恨んでるのだって分かってる!だけど、あの子は…あの子は何もしていないわ!あの子は無関係よ。それにまだ子どもよ!」

 

その行動に苛立ちをそのまま低い声に乗せて言われた言葉にルアは感情をむき出し叫び散らす。

 

「子どもだからって関係ない?裏であることには変わりねぇ!あいつだって人間を襲うかもしれねぇんだぞ!」

 

彼女の言い分に彼はそう言い放った。

 

「そんな事ない!いいアルファ。怒りに任せて復讐したい気持ちもわかるけど、あの子を殺せば今度はアルファがあいつ等と同じことをしたことになるのよ!たくさんの人を殺した…」

 

「!!」

 

「それにあの子が私に何かした?傷つけた?何もしてないじゃない!裏であるというだけで命を狙われて、怯えているあの子をあんたは殺すの?そんなの間違ってるわ!」

 

ルアの言葉に考えてもいなかったことを言われ驚く。そんなアルファへと彼女は説教する様に言う。

 

「… …」

 

「守ってあげなきゃ…私達が」

 

ようやく冷静さを取り戻した彼へと彼女は諭すように呟く。

 

「… …どけ」

 

落ち着きを取り戻した彼が静かな声で言うとルアを押しのける。

 

「アルファ!」

 

その様子に彼女はまだ分からないのかと言いたげに口調を荒げた。

 

「…守りに行けないだろう」

 

「!うん」

 

アルファの言葉に一瞬驚いたが嬉しそうに笑顔で頷く。そうして二人は駆け足で少女の後を追いかけていったのだった。