小説「Axis of Fate」

案/絵/編集:たみぽん。文:水竜寺葵。オリジナルファンタジー小説。更新は約月1ぐらいです。

第2話②「ラウルス遺跡」Axis of Fate~大樹物語~

「ねぇアルファ、聞こえる?」

 

落ちた先は暗闇で何も見えなかったためルアは大きな声をあげてアルファの無事を確かめる。


「大丈夫なの。怪我とかしてない?」


「大丈夫だ。だけど真っ暗で何も見えねえな」


それにすぐに返事が返ってきて彼女は胸を撫でおろした。


「明かりをつけるから待ってて… …光よ集え」


ルアが言うと小さな光の粒子が集まりこぶし大の光球となり辺りを優しく照らし出す。明るくなった空間を見回したアルファは呟く。


「…牢屋みたいだな」


周りには石が積み上げられた壁と鉄檻、彼の言う様に牢屋のような感じの作りになっていた。


「兎に角ここを出るぞ…これくらいなら…いけるか」


檻を触って確認する。錆び付き朽ち果てていて、少し力を加えるだけで簡単に壊れそうだと分かった。


「ちょっと離れてろ… …ふんっ!」


アルファが檻を勢いよく蹴りつける。錆び付いた独特の音を響かせながらそれは真っ二つに折れて壊れた。

 

「狭い通路ね」


「あんまり離れるなよ」


牢屋のような空間から出ると石壁が迫る様な作りで出来ている通路を通る。


「あ、階段」


通路を抜けたさきに石でできた階段にルアが気付き声をあげた。


「…登れそうだな」


足場を確かめ登れることを確認したアルファが先頭に立ち進む。

上の階層へと続く階段を上がると、天井が高く広い廊下に出た。地下だというのに少し明るい。ルアがある物に気付き顔を近づける。


「これ、ヒカリゴケね」


そこには壁に張り付くように生殖する自らが発光する植物が生えていた。

 

「それだけじゃないぜ。あそこ見ろよ」


アルファが言うと目線だけで前方を示す。


「あ、なるほど」


その視線をたどって見たルアも納得して頷いた。ヒカリゴケの光ももちろん関係しているが、それだけではなくて建物の中心部にある中庭から微かに光が漏れていたから全体明るくなっていたのだ。


「あっちに行くしかなさそうだな」


「後ろは今登ってきた階段以外はないものね」


中庭が広がっている空間へ行くしか方法がなさそうなので二人はそのまま前へと前進する。

 

中庭は天井や壁、床にまで木の根が張り巡らされていて歩きずかった。


「転ぶなよ」


「アルファこそ」


歩きにくい足場を注意深く見ながら先へと進む。


「あれ、噴水かしら?」


中庭の中心にはかつては水が出ていたと思われる枯れた噴水があり、大きい翼の生えた天使のオブジェが陽の光に照らされ神秘的に映って見えた。


「…あれは…?」


「如何した?」


噴水を見ていたルアが何かを見つける。彼女の様子にアルファもそちらへと視線を送った。
ひび割れた天井から光が漏れている下に人が倒れているのを見つける。マントを羽織っていて性別は二人の位置からでは分からないが体の大きさからして子どもの様だ。


「大変!」


顔まではっきりとは見えないが子どもが倒れているということに気付いたルアが慌てて声をあげる。なにかの拍子に天井に開いてしまった穴から落ちてきてしまったのだろうかと考えながら彼女は子どもの側まで駆け寄る。


「何でこんなところに?」


アルファもなぜ子どもがこんな山奥にと疑問を抱きながらもその後を追いかけていった。