小説「Axis of Fate」

案/絵/編集:たみぽん。文:水竜寺葵。オリジナルファンタジー小説。更新は約月1ぐらいです。

第2話①「ラウルス遺跡」Axis of Fate~大樹物語~

王都イリンシュレイより南西、山中。

薄暗く木々が生い茂る森深く。


「はぁ…はぁ…」


そこにマントを羽織った子どもが切羽詰まった様子で必死に走っていた。


「鬼ごっこはもうつまらないな~。そろそろ終わりにしたいな~♪」


息を切らし、さらに森の奥へと逃げ込む子ども。その後から男が追いかけてくる。

彼は余裕な笑みを浮かべてそう言った。
子どもは大きな木の陰に隠れる。

しかしすぐそばまで男の足音が近づいてきた。


「… …」


「何処に行ったのかな~?子猫ちゃん」


口を両手で塞ぎ息を潜めながら男が通り過ぎてくれることを願い待つ。

男は周囲の音を聞き拾いながら子供を探す。
その瞬間、子どもが座っていた地面の底にひびが入り嫌な音とと共に底が抜ける。


「!!」


子どもはしゃがみ込んだ姿勢のままその穴の底へと落ちていった。


「そこか!」


物音を聞いた男がその場へと駆けて行くが、穴は子供が一人通れるくらいの大きさしかなく彼がそこを通ることはできない。


「ちっ…」


不満げに小さく舌打ちする男だがすぐにあることを思い出して前を向く。


「たしか…この辺りはラウルスがあったはず…」


静かに呟くとすぐにその場を離れた。

 

***

 

同じころ、山の頂上付近ではアルファとルアがラウルス遺跡へとたどり着いていた。


「ふぅ~。ようやく着いた…」


「休んでる暇はねえぞ。ここはまだ入り口だからな」


弾む息を落ち着かせようと深呼吸しながらルアが言うと、アルファがそれに額に滲む汗を拭いながら話す。
ここラウルス遺跡はその昔王都並みに栄えた町であったが、天変地異によりその街のほとんどが地に埋もれてしまったらしい。
今では教会なのか王宮なのか、当時は高層で立派だったと思われる白いレンガ調の建物の一部だけが地面から出ているだけである。

数百年も経っているせいか、その外観は朽ち果てていて廃墟と化していた。


「さあ、中に入るぞ」


「うん」


軽く会話を交わしながら魔物に気をつけながら遺跡の中へと入る

。中へ入ると土臭い匂いが漂い、薄暗く砂埃まみれの空間があり、そんな広い部屋の奥には古臭い立派な椅子が置いてあるだけだった。


「何もないわね」


「そうだな。地下に続く階段か何かないか調べてみるか」


ルアの言葉に相槌を打ったアルファだが、そう言うなり部屋の壁や砂まみれの地面を注意深く調べ始める。その様子に彼女も周囲をくまなく探し始めた。

暫くの間、下へと続く道を探す2人だったが、仕掛けも何も見つからない状況にルアが呟く。


「う~ん。何も見つからないわね」


「そうだな。特に怪しいところもなければ、仕掛けもないな」


アルファはいまだに何かないかと探しながら適当に相槌を打つ。


「ふ~。疲れた~」


探すにに飽きてしまった彼女は疲れた体を休ませようと椅子に座る。
すると…


カチッ


という音が空間に響いた。


「え?」


アルファも音を聞いて何か作動するのではないかと身構える。


(罠か!?)


なにかの罠かもしれないと思ったが

 

… … …

 

特に何かが起こることもなく、静まり返った部屋に二人の息遣いだけが聞こえた。


「…何も…起きない?」


静寂を破る様にルアが言う。


「ルア、そこから動くなよ」


そんな彼女へと彼がそう声をかけると椅子へと近づいていく。


「ぬお!?」


瞬間アルファが立っていた床が抜け落ち、彼はそのまま真っ逆さまに穴の中へと転落していってしまった。


「アルファ!」


それを見たルアも慌てて彼を追いかける様に椅子から立ち上がり穴の中へと飛び込んでいった。